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文科省の調査によると、小学校での暴力行為の発生件数が近年急増しており、2006年が3,803件だったのが、2019年には43,613件と、13年間で約11.5倍にも達しており、中学・高校を合計した数よりも多い件数となっています。
実際、小学校の研修会などでも、衝動的に暴力や攻撃的な言動を繰り返す子どもの事例はしばしば報告されています。そして、これらの問題行動の背後には、子どもの感情制御の困難さがあり、これは「力で抑え込む」指導では決して解決しない問題です。
本書では感情コントロールという聞き慣れない言葉をテーマにしています。感情コントロールとは、どういうことか。本書では様々な心の苦しみを持つ子どもの14の事例をもとに理解と対応について解説し、6章で理論的にまとめました。
解説では、複雑な感情を持つ子どもを理解するための3つの視点を提示します。
①発達論的な視点――小1プロブレムを理解するためには、幼児期の自我・社会性の発達過程でのつまずきの問題への理解が必要です。また高学年の親密な友人関係の中で生じるいじめの問題を理解するためには、前青春期の発達過程とそのつまずきへの理解が必要です。
②児童虐待、不安定なアタッチメント(愛着)の視点――児童虐待の問題は決して一部の子どもたちの問題ではありません。日本の子どもたちの少なくとも15パーセント以上の子どもが一時的にしろ、厚労省の「児童虐待」の定義に該当する体験をしています。また、児童虐待とまでは言えなくても、養育者との不安定なアタッチメント(愛着)に苦しむ子どもは決して少なくありません。
③ASDなどの発達障害や知的障害その他の「特別なニーズ」の視点――教育・保育現場の様々な事例を聞かせてもらう機会のなかで、もっとも多いのがASDの子どもの事例です。養育者だけでなく、教師など、発達障害の子どもに関わる大人がその子どもの発達特性をよく理解し、子どものアタッチメントのニードを敏感に読み取って応答し、安心感を与えることができれば、発達障害の子どもは発達の凸凹は抱えながらも、それを社会的な個性として発揮していくことができるのではないでしょうか。
まずは攻撃的な言動の背後にあるアタッチメントのニードを読み取ることです。そして子どもにとってのアタッチメント対象になり、安心感を届けることが重要と著者は言います。そして子どもの感情を共感的に読み取って丁寧に言語化して返していくことで子どもの「心を抱きしめる」ことになり、アタッチメントのニードを満たし、安心感を与えます。
また、教師が子どものアタッチメントのニードに敏感に応答していくだけでは子どもの大きな変化にはつながらない場合も少なくありません。子どもが養育者に対してもアタッチメントのニードを素直に出せるようになり、家庭の中で安心感を持てるようになることも極めて重要な実践課題で、本書でも解説します。
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