1~2日で出荷、新刊の場合、発売日以降のお届けになります
二三(ふみ)は最初から女として生まれたわけではなかった。幼い彼女を強烈に惹きつけたのは親戚のお兄ちゃんがプレイするテレビゲームの〝スーパーヒーローズ〟の戦士たちだった。画面の中にしか存在せず、一心不乱に純粋な暴力を使って殴り合うアニメキャラのヒーローズたちに二三の心は釘付けだった。しかし二三は女でありそれをお兄ちゃんの性的イタズラで知ることになる。女になるとはどういうことか。二三は小学生の時、ガキ大将の松田が同級生を殴るのを止めた。「「何でお前が泣くんだよ・・・・・・」お前には関係ないだろ。言いながら、松田の表情からは毒気が少し抜かれていた」「私は何も言わずに泣く。静かな興奮が止まらない。私は今、飛んだのだ。松田のように大ぶりな、腕を使った方法とは違う方法で。・・・・・・私は一生この迸る様な悦びを追いかけ、これの為に死のうと衝動的に決意していた。それは死ぬまで続く私の呪いだった」。二三は女になることを決めた。だがスーパーヒーローズへの憧れは、届かないイデアへの希求が失われることはない。思春期の二三の心をセックスが捉える。セックスすればスーパーヒーローズに届くのではないか、出会えるのではないか。失望の連続の果てに二三はアメリカに留学しそこで就職する。映画で見ただけの美しい男たちがいる国だ。若く美しい二三は男たちを虜にする。が、それでも満たされない。理想の男は高校生の時に交換留学生として学校に来ていたアメリカ人の、スレンダーで美しかったイベットに変わる。イベットは性別がよくわからないモナリザになる。そしてアメリカでルームメイトになった冴えない中年男、ゲイブの息子のジョニーが二三の心を鷲づかみにする。無関心で残酷な美少年を二三は神とも悪魔とも崇める。もうセックスでは満たされない。二三が求めているのは実在の男ではない、一つの偶像(イデア)だ。それはどうしたら得られるのか・・・。金魚屋新人賞を受賞し、選考委員の芥川賞作家、辻原登氏が『日本純文学史上に残るだろう私小説の傑作』と評価した純文学私小説の傑作!
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。