【書籍の特徴】
本書では,システム制御分野の学生や研究者,技術者を主な読者に想定して,システム制御工学を専門とする著者が,システム制御工学のことばで電力システムの構造や数学的な基礎を解説しています。また,著者らの研究グループが開発する数値シミュレーションプラットフォームであるGUILDA(Grid & Utility Infrastructure Linkage Dynamics Analyzer)を活用して,電力システムの解析や制御に関する数値シミュレーション環境を読者が独力で構築できるように,MATLABによるオブジェクト指向プログラミングの基礎を解説しています。
【本書の構成】
第1章:本書の位置づけやねらい,特徴,読み進め方などを説明します。
第2章:電力系統の数理モデルを解説します。特に,電力系統全体は,代数方程式で記述される送電網を介して,微分方程式で記述される同期発電機と代数方程式で記述される負荷が結合された,非線形の微分代数方程式系として表現されることを説明します。
第3章:非線形の微分代数方程式系で記述される電力系統モデルの数値シミュレーション手法を解説します。また,MATLABによるオブジェクト指向プログラミングに基づいて,構造化された数値シミュレーション環境を構築するための指針を示します。
第4章:近似線形化を用いて電力系統モデルの安定性解析を行います。発展的な話題として,動的システムの受動性の概念を用いて,電力系統モデルの定態安定性が系統的に解析できることを明らかにします。
第5章:電力系統モデルの周波数安定化制御と過渡安定化制御を解説します。具体的には,平衡点によらない受動性の概念を用いて,周波数安定化制御系に対する安定領域の解析を行います。また,過渡安定化制御に用いられる標準的な自動電圧調整器や系統安定化装置の構成や機能を解説します。
第6章:本書で説明された基礎事項を応用して,IEEE 68母線系統モデルと呼ばれる標準的な大規模モデルの数値シミュレーションを行います。数値シミュレーションでは,負荷変動に対する自動発電制御の効果や母線地絡に対する過渡安定度を解析します。
【著者からのメッセージ】
システム制御分野は,制御理論,情報理論,データ科学,システム科学,最適化などを幅広く横断して理論と技術を磨いてきました。一方で,ともすると数学的な研究に注力するあまり,実応用を脇に置いて理論研究や技術開発が進められることも少なくありませんでした。本書は,システム制御の理論と技術がもつ潜在能力を発揮する場を提供することによって,電力システムの学術的な面白さを多くの方々に体験してもらうことをねらって執筆されています。本書が実学と数理学を結ぶ架け橋となり,微力ながらも電力システムの未来をつくる一助となることを願います。
★本書のプログラムとカラー図をWebに掲載予定。詳しくはコロナ社HPをご確認ください。★
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