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米大統領選→コロナワクチン→ウクライナ侵攻、次々に連鎖する陰謀論。誤情報をネットで流布する匿名の発信者を追い、デマに翻弄される人々の声を聞く――。高度化する“嘘”の裏側に迫るドキュメント。『読売新聞』長期連載「虚実のはざま」、待望の書籍化。
コロナ禍でデマや陰謀論がかつてない広がりを見せ、社会に混乱と不信、そして分断をもたらした。そうした現象を傍から見ていて、疑問を抱いていた人は少なくないだろう。
いったいどんな人が? 流布する真意は何なのか? なぜ信じてしまうのか?・・・・・・
本書は、その答えと背景にあるものを解き明かそうと、記者が様々な立場の当事者に取材を重ね、実相に肉薄したドキュメントである。
私たちが、読売新聞の長期連載「虚実のはざま」の取材を始めたのは今から2年近く前の2020年11月。この問題への関心は日本では高くなかった時期だ。
だが、今までとは違う何かが起きているのではないか。でも言葉ではうまく言い表せない・・・・・・。そんな、つかみどころのない不気味さを覚えたのが出発点だった。
SNSの投稿を観察すると、コロナを巡る真偽不明の情報がウイルスのごとく増殖していた。得体の知れない異変は、身近なところでも感じられた。仕事の関係者やプライベートの知人などから「新聞は操られているから、本当のことを書けないんでしょ」「フェイスブックとユーチューブさえ見ていたら、真実がわかりますから」と面と向かって言われ、当惑することがしばしばあった。
同じ事柄について話しているのに、「何が事実なのか」という根本的な認識すらも全く異なる人が増えている。虚と実の境界がどんどん曖昧になり、社会で共有されるべき大切な土台が少しずつ浸食されているのではないか。そんな違和感が膨らんでいた。コロナ禍がもたらす負の作用が、それを顕在化させつつあるようにも感じていた。
ネットで起きている問題を取り上げようと思えば、取材の「壁」になるのが当事者の匿名性である。仮に発信者が分かったとしても事案の性質上、話をしてくれる人は少ない。確かにSNSをずっと観察していれば、どんな現象が起きているか把握することはできる。真偽不明の情報を検証し、「誤りだ」と指摘することも重要だ。だが、画面の前で顔の見えない相手に眉をひそめているだけでは、「なぜ」という本質的な問いに対し、根拠をもって答えるのは難しい。それが、取材に時間と労力を要することになったとしても、このテーマに向き合おうと思った理由である。 (「はじめに」より)
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