超高齢者は,たとえ自分の思いを表出することが困難となったとしても,痛み,呼吸困難,排泄障害,睡眠障害,抑うつなど,さまざまな苦痛を抱えています.しかし,その苦痛が「病」によるものか「老い」によるものかの見極めは難しく,治療による回復が見込めなかったり治療負担が大きすぎる場合には,「老い」の先にある死を見据えてケアすることが必要となります.そのような場合,食事や排泄,清潔・整容,移動などの際に丁寧なケアを繰り返すことこそが,超高齢者にとって,苦痛を緩和し尊厳ある生活を支えるものとなります.
本書では,超高齢者にとっての最善の医療,動くことの意味,ACP,症状マネジメント,家族,臨死期,組織づくりといった視点から,超高齢の緩和ケアについて解説します.ケア提供者が,日々行っている自らの実践の意義と価値に改めて気づける一冊です.
目次
1章 超高齢者における緩和ケアとは
A 超高齢者を対象にした緩和ケアの考え方
B 超高齢者の全人的苦痛(トータルペイン)
2章 超高齢者にとって最善の医療を考える
A 虚弱期のケア
B 終末期のケア
3章 動くことは生きること
A 超高齢者にとって「動く」こととは
B 「環境」を調整することの意味と加齢変化による影響
C 超高齢者の生活における緩和ケア―日々のケアが緩和ケア―
4章 超高齢者にとってのアドバンス・ケア・プランニングとは
A 日々のケアがアドバンス・ケア・プランニング
B 意思決定支援
C 医療・ケア従事者の行動規範
5章 超高齢者の症状マネジメント
A 症状マネジメントの重要な視点
B 非薬物療法
C 薬物療法
D 老年症候群における症状マネジメントの実際
6章 超高齢者の家族等の緩和ケア
A 超高齢者の家族等が体験する喪失と悲嘆
B あいまいな喪失を体験している家族のアセスメントとケア
7章 超高齢者の臨死期の緩和ケア
A 臨死期とは
B 臨死期の症状マネジメント
C 臨死期における家族等への緩和ケア
8章 超高齢者の緩和ケアを実現するために
A 組織で取り組む超高齢者の緩和ケア
B 超高齢者の緩和ケアを実現するための人材育成
C 場の違いから見る緩和ケア
9章 事例を通し超高齢者の緩和ケアを考える
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