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■制作意図
近年、「アート史におけるクィア」を考えるという傾向が世界的に広がり、「クィア・アート」と呼ばれるジャンルの研究が進んでいます。
本書『クィア・アートの世界』は、第一に、抑圧や偏見、差別によってアートとして語られず、それ故にこれまで私たちが目にすることができなかったアートを見直したい。第二に、アートにおける「クィア」を考える上で、社会的に抑圧され差別を受けていたものが、アートにおいては歓迎され、多く取り上げられている、それがなぜなのかという問題を扱いたい。そして第三に、「クィア」という言葉がとても多様で共通の認識がないため、それを考える一つの試みを行いたいとの思いから、制作に至りました。
■書籍の内容
本書では、「クィア」がいかに社会的、歴史的に変遷していったかを述べた上で、「アートにおけるクィア」をセクシュアルマイノリティに限らず、その域を超え、抑圧や差別等によりアートとして語られてこなかった広いジャンルの作品を包括して取り上げました。
LGBTQ+のアート、フェミニズムのアート、カウンターカルチャーやポップ・カルチャーにおける多彩な表現のアート、アンダーグラウンド・アート、ポルノグラフィティのアート……。独自の視点で、古代エジプトから現代までーー美術(絵画、挿絵、彫刻)を中心に、多岐にわたるジャンルの作品とともに、アート史における「クィア」の流れを追っていき、「クィア・アート」の系譜を探究しております。
美術史上の名作とされる作品の中に「クィア」性を見出したり、抑圧や偏見、差別によってこれまで見ることができなかった多様な作品を、驚きと感動、そして問題提起を含んだ解釈で紹介します。
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