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それは、21世紀らしい美の誕生―――世界を魅了する屈指の景観の成り立ちを読み解く。
【2024年日本建築学会著作賞受賞】
イタリア・トスカーナ、オルチャ渓谷の田園風景。都市と田園が織りなす、人間と自然とが作り上げた「ありきたりの風景」は、2004年、傑出した文化的景観として世界遺産に登録されました。この出来事は、都市文明のパラダイムから解かれ、田園や農業が再評価される時代の到来を象徴し大変話題となりました。
この屈指の空間の成り立ちを、自然条件や大地を活かした人間の多様な営み(産業)、まちや田園にある居住地や建造物(の類型)、それらを結ぶ道のネットワーク、長年蓄積された歴史や伝統、文化、そして現代のセンスによる再生など、様々要素から「空間人類学」的に読み解き、テリトーリオが育んできたアイデンティティを描き出します。
*「『テリトーリオ』とは、一般に領土と訳される英語のテリトリーとは概念がかなり異なり、実にイタリアらしい言葉である。(中略)土地のもつ自然条件、あるいは大地の特質を活かしながら、そこを舞台に人間の多様な営みが展開してきた。農業、牧畜、林業、諸々の産業が営まれ、町や村の居住地ができ、田園には農場、修道院が点在し、これらを結ぶ道のネットワークもできる。長い時間の経過とともにそこに独自の歴史や伝統が蓄積され、固有の景観や地域共同体が生まれてきた。こうして成立する社会経済的、文化的なアイデンティティを共有する空間の広がりとしての地域あるいは領域が「テリトーリオ」なのである。(中略)風景とは様々な要素からなるテリトーリオの特徴が視覚的に表現されたものである。」
(陣内秀信「はじめに」より)
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