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中国地方というと範囲が広く、山陽・山陰地方の岡山・広島・山口、島根・鳥取の5県をまとめています。これら5つの県には昭和30年代まで実に16の地方鉄道が存在し、地元の人々の足になっていました。著者が地方私鉄を回り出したころ、まだ随所に終戦後の混乱の名残は残っていましたが、日本は復興に向けて国全体が進み始めた時代でもありました。各地の道路の整備も進んでいて、名物の未舗装の道路も少しずつ整備が進みバス転換の始まった時代です。
中国地方の中小私鉄を見るといくつかのパターンに分かれています。中堅都市に基盤を置いてますます発展を遂げた広島電鉄、瀬戸内に発展した臨港地帯に根差した水島臨港鉄道、幾度の経営危機にさらされながらも観光鉄道として存在感を残す一畑電車、この3つの鉄道が山陽と山陰に残る私鉄になりました。昭和30~40年代にはそれ以外の特に小さな路線の廃止が続きました。また国鉄線の延伸によって置き換わった西大寺鉄道のケースもありますし、井原鉄道の場合は新しい鉄道の建設がありました。瀬戸大橋線の開業に合わせるかのように消えた下津井電鉄とともに、軌間の狭い軽便鉄道の悲劇かもしれません。万全かと思われた片上鉄道は鉱山の衰退と国鉄の貨物輸送の見直しでその使命を全うしました。
かつて国鉄線の各駅から出ていた小さな私鉄はすべて姿を消しました。今そこを列車で通るとその駅は無人駅になっていたり、あるいは立派な駅前広場やビルの立ち並ぶ小都会が出現して戸惑うことがありますが、そこには国鉄線からのわずかな乗換え客を待っていた機械式ディーゼルカーの姿を見ることはできません。
この巻は中国地方5県に存在した16の鉄道をご紹介します。このシリーズでの対象の時代(昭和30年代以降)の少し前に廃止された鞆鉄道はコラム的扱いで取り上げています。またこの地方にかつて存在した陰陽連絡鉄道について少し角度を変えて解説を加えています。
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