東アジアの高齢者ケア

東アジアの高齢者ケア

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出版社
新評論
著者名
西下彰俊
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2022年9月
判型
A5
ISBN
9784794812186

スウェーデンの高齢者ケア研究と紹介の第一人者が、日本を含む東アジアの介護システムを比較、
その課題を掘り下げる意欲作!

 著者は、これまでスウェーデンの高齢者ケアについて福祉社会学の視点から研究を重ね、『スウェーデンの高齢者ケア』(2007年)と『揺れるスウェーデン』(2012年)を上梓してきた。この二冊で浮き彫りになったのは、先進的な福祉国家のイメージが強いスウェーデンの高齢者ケアシステムがもつ光と影であった。また、プロレタリア作家イーヴァル・ロー=ヨハンソンの著書『スウェーデン:高齢者福祉改革の原点』(共訳、2013年)の翻訳を通じて、1950年当時のスウェーデンの、高齢者を含む社会的弱者をめぐる残酷な状況を明らかにした。3冊とも新評論のお世話になっている。
 そしてこの度、10年近くの歳月を経て、本書『東アジアの高齢者ケア』を世に問うこととなった。本書は、マクロレベルの抽象度の高い福祉国家論と、ミクロレベルの個別性の高い介護のモノグラフを架橋する、いわばメゾレベルの福祉社会学を志向している。アメリカの社会学者ロバート・キング・マートン流に言えば、中範囲の比較福祉社会学研究の試みである。
 日本の介護保険は、フルスペック型でサービスの種類が多い「バスタオル型」である。韓国は逆に、スペック限定型でサービスの種類が少ない「フェイスタオル型」と言える。一方台湾では、税を財源に心身障がい者をも対象とする「ユニバーサル型」の介護システムが実施されているものの、運用が複雑で独自性が強い。本書ではこれらの国々の介護システムの全体像、そして要介護高齢者にとって最も重要なケアマネジメントのありようについて、その光と影を実証データに基づいて浮き彫りにする。加えて、各国が乗り越えるべき課題とその展望をも具体的に提示する。
 本書は、一人の研究者が単独で行った、本邦初の比較介護政策研究である。さらに、患者自主権利法に基づいて、「豊かな死」の社会的基盤を整備する台湾の先進的な姿勢も紹介し、その法律上の問題点にも言及する意欲的な書でもある。(にしした・あきとし)

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