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理解はあとまわし、まずは読んでみて!
「真のバリアフリー」を求めて物言う視覚障害者のちょっと毒を含んだ傑作エッセイ集
「ハンディーはないほうがいいし、お金は多いほうがいいし、見た目もいいほうが有利だ」と、視覚障害者(全盲)で八〇歳の著者は言う。障害、差別について、タブーを恐れず、社会の本質に迫っていく本書、「視覚障害者の半分を敵に回すかも…」と著者自身が心配するほどである。「障害は個性だ」「障害者だって何でもできる」「障害者は純粋だ」など、時に巷で聞くフレーズは「すべて眉唾ものです」という記述まである。
著者が求めているのは真のバリアフリー。障害当事者が「できること」ばかりを強調し、「できないこと」に触れないという姿勢は、トラブルを生じさせるだけ。「僕には弱点も限界もあって、皆さんを困らせることもありますが、力を貸してほしい」と謙虚に、「しかし、遠慮なく主張し続けてほしい」とも言う。著者のこの言葉を、健常者はどのように受け止めるのか。「優しさと平和に勝る福祉なし」という著者の一句が健常者に問うているのは、感性かもしれない。
本書は、月刊ミニコミ紙『お好み書き』(一九九〇年創刊)に現在も連載されているエッセイ「ちょっと世間話」を精選し、テーマ別にまとめたものである。「毒にも薬にもならない」と当人は謙遜するが、差別や障害の問題に留まらず、事故・災害、疫病、戦争、政治、スポーツ、女性の地位向上と、幅広い分野の問題に、鋭く軽妙な言い回しで切り込んでいる。晴眼者は、「見ていながら見えていない」ことの多さに驚き、「見えない」ということの真実を知り、何度も立ち止まることになるだろう。
「疑問が山ほど浮かんでくるでしょうが、ひとまずそれらは後回しにして、僕の世間話にお付き合いください。なぜって、心の交流は理解しあうから可能なのではなく、まずは交流するから分かり合えるようになり、素朴な疑問も自然に解消していくからです。ものは試し、まずは本書を読んでみてください」。この著者の願いに、あなたは何と応えますか?(編集部)
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