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詩、絵画、映画から、宗教、逃亡奴隷、移民、そして製糖……。
ディアスポラの文化や歴史を縦横に論じ、『老人と海』のまったく新たな読み解きへとなだれ込む、圧倒的な知的冒険。アフロ宗教の司祭の資格を持つ著者でなければ書き得なかった、かつてない圧巻のキューバ論。
キューバには一般の観光客の知らない世界があるのです。ここで取りあげるアフロキューバの世界です。なぜアフリカ由来の宗教や文化を論じるのでしょうか。それを三つの観点から説明しましょう。
第一に、キューバのナショナル・アイデンティティは、ヨーロッパ(スペイン系)とアフリカ(それに若干の先住民や中国人移民)が混ざった「混交文化」です。
そして、アフロキューバ文化を取りあげる第二の理由としては、それがわれわれの日本文化の考察に応用できると考えるからです。
そして、最後の三つめの理由ですが、これは個人的な事情にかかわります。私は二〇〇九年夏に、いまのパドリーノ(代父)のもとでサンテリアの「オルーラの手」と呼ばれる、一種のイニシエーション(通過儀礼)をおこないました。三日かけて私の運勢と守護霊を占ってもらう儀式です。
ヘミングウェイ論をはじめとして、ここに収録した文章は、私にとって未知の分野への挑戦でした。サンテリアの二百五十六通りの運勢のひとつに「大いなる冒険に人を駆りたてるのは、その人の知性である」ということわざが出てきます。お金や名誉ではなく、知性(頭脳)の活性化のために、どうぞご一緒に冒険をお楽しみください。
(本書「まえがき」より)
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