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亡命作家の記憶と生
パリの亡命文壇でナボコフと並び称されるも、ソ連解体前後の再評価まで、長らく忘れられていた作家ガズダーノフの代表作二篇。20世紀を中心に、ロシア語で書かれた異形の作品を紹介するシリーズ〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉第一巻。
クレールとの夕べ:作家自身を思わせる語り手の「ぼく」は、十月革命前に知り合ったフランス人女性クレールとパリで10年ぶりに再会する。長いあいだ焦がれていた彼女との関係がついに現実になったとき、「ぼく」は過去の記憶――孤独な子ども時代や混乱した内戦の戦場――に包まれる。語り手が意識の流れを忠実に追って内的独白を連ねていく文体はロシア文学では目新しく、当時の書評の多くがプルーストの影響に言及した。
アレクサンドル・ヴォルフの亡霊:語り手の「ぼく」は、かつて戦場である兵士を殺したときの記憶と見紛う記述を、見知らぬイギリスの作家の短篇の中に見つける。それは自分が殺した人物が書いたとしか考えられない――こうして、謎の作家「アレクサンドル・ヴォルフ」をめぐる奇妙な冒険が始まる。罪と贖い、偶然と運命、生と死を実存的に問い、ドストエフスキーの『分身』をも彷彿とさせる秀作。
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