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アメリカでは、州の予算によって設立された州立大学は州に対して一定の社会契約を果たさなければならない、という考えがある。その社会契約の一つに、特定の学力条件を満たした州民であれば誰でも州立大学に入学できる、という進歩的な理念と制度があり、各州で公立大学が設立されて以降、アメリカ社会の形成に大きく寄与してきた。
本書は、アメリカ最大にして、最も選抜制の高い公立研究大学であるカリフォルニア大学において、公的機関の目的と将来に関する歴史的・今日的課題を包括的に論証したものである。その内容は人種、ジェンダーおよび出身階級などにより大きく影響を受けることになる大学への衡平なアクセスに関する議論と実践、大学自治を巡る攻防、標準化テストの導入への対応、さらには民営化とグローバリゼーションが大学に与える影響など、多岐にわたる。
アメリカは世界に先駆けて高等教育の大衆化を実現させてきたが、今日においては大学へのアクセスと卒業率は低下し、特に若い学生の間でそのことが顕著になっている。またEUやOECDの主要加盟国、中国、インドなどの新興経済大国からも高等教育制度改革の分野で挑戦を受けていると著者は警告をしている。質が高く、アクセスが保証されている高等教育システムという「アメリカの優位性」は、グローバル経済の中で今後も維持していくことができるのか。わが国の高等教育改革を論じていくうえでも、カリフォルニア大学の実践は貴重な知見を与えてくれるだろう。
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