かつては限られた語りしか許されていなかった抗日戦争(日中戦争)の記憶が、国力を増す中国でいま、「よい戦争」として甦っている。タブーだった蒋介石と国民党に対する再評価が進み、第二次世界大戦後の国際秩序の形成に自国が果たした役割にも、新たなまなざしが向けられている。何が起きているのか?
本書は、オックスフォード大学で現代中国史を研究する第一人者が、1980年代以降の政界と学界の動向から、博物館の展示拡充、文学潮流、人気映画、ソーシャル・メディア上の議論までを取り上げ、中国のナショナリズムと内的論理を多角的に分析するものである。
射程は現在の日中関係にも及ぶ。『南京! 南京!』『エイト・ハンドレッド(八佰)』など中国のヒット映画と、『永遠の0』『この世界の片隅に』ほか日本の人気作との違いを論じ、歴史教科書問題や尖閣諸島(釣魚群島)をめぐる対立の背景に潜む異なる記憶の回路にも迫っていく。
日中関係の今後を考えるうえでも新たな手がかりとなる本書は、『フォーリン・アフェアーズ』『スペクテイター』『アジアン・レビュー・オブ・ブックス』などで年間ベストブックにも選ばれた。日本版序文と監訳者による解説を収録。
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