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古代地中海世界では、紀元前8世紀から紀元前5世紀にかけて卓越した文明が繁栄し、そこで達成された知的成果は、人類共通の文化遺産として、今日なお普遍的な価値を保ち続けている。
このような文明世界が成立し、さまざまな変容を伴いながらも長期にわたって独自の創造性を発揮することができた、その根本的な要因とは何だったのか。
個人と集団のアイデンティティに関わる文化的記憶こそがこの問題を検討するためのもっとも重要な鍵概念になるのではないかという見通しのもと、さまざまな文化的記憶を創出・強化した知の動態の解明に向けて進めてきた研究の成果を紹介する。
本書は、桜井万里子・師尾晶子編『古代地中海世界のダイナミズム―空間・ネットワーク・文化の交錯―』(山川出版社 2010年)の続編にあたり、この11年間に古代地中海世界の歴史学、考古学、美術史学などの諸分野において先端的な研究を蓄積してきた研究者が、関連するそれぞれの研究成果の一端を一般読者にも分かりやすい形で提示した。あらためて古代ギリシア、エジプト、ローマ世界の文化の奥深い魅力を味わっていただきたい。
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