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【本書の特徴】
本書は,膨大な時系列データの中から,AI技術を活用して有意義な知見を抽出する,時系列AIモデリングについて述べる。時系列AIモデリングは,履歴を扱う高度な予測器であるため,学習理論の理解や,有効な学習データ収集技術は初心者には難しいと思われる。例えば,理論を勉強して自分の仕事で試そうと時系列データを収集しても,現実は偏った学習データしか得られない,あるいは現実的な収束条件の判断ができないなどの問題に直面する。そこで本書は基本的な理論を数式展開により示し,引き続き当該理論に対応する実践応用例を示すという従来見られなかった構成を採用し,純粋な数式の導出という抽象的な理論展開の数学書や,逆に,理論は述べずに既製品ツールにデータを入出力する方法だけを述べたハウツー本とは違うアプローチを目指した。各実例は,すべて電気学会,米国電気電子学会(IEEE)などの専門家の査読を受けた論文から選び,信頼性の確保に努めた。
【本書の構成】
1章は,システム制御における「時系列」の定義から始めて,対象物理量の時系列データからの制御設計モデリングの位置づけを述べる。
2章は,時系列データモデリングにおける最も基本的な手法として,線形重回帰モデリングおよび自己回帰(AR)モデリングの基礎理論,および,それぞれの実応用例を示す。
3章は,時系列データによるAI機械学習モデリングの代表として,ニューラルネットワークによる制御対象動特性のモデル化の基礎理論と,その応用としてステップ応答特性のモデリング実例について述べる。
4章は,時系列履歴によりその後の動作が異なる制御対象モデリングとして近年注目されてきたLSTMニューラルネットワークの理論,およびその応用として制御上の突発事象の予測モデル実例を示す。
5章は,上記の時系列AIモデルを用いた最適制御として,ヒューリスティック最適探索制御の理論と実例について述べる。
6章は,システム制御設計の現場で起こる,時系列データ収集における現実的な手法として,収集データ偏り補正法,平常動作データからの学習データ推定法について述べる。
7章は,上記各章の手法を実装する方法として,時系列データ収集プラットフォーム,現場収集データからの注目ゾーン抽出法,機械学習ソフトウェア自作開発という実践的手法を示す。
【読者へのメッセージ】
これまでのこの分野の書物は,学習データが十分に収集できている,あるいは,標準データセットをダウンロードするだけ,という状況からモデリング理論を論じるものがほとんどだったと思います。しかし,現実には十分な学習データ収集そのものが問題であり困難であることが普通です。それゆえ,本書では実用的な時系列データ収集システム実装法,対象システムを平常運転させながら学習時系列データ収集する方法,収集した学習データの分布偏り補正方法など,現実の問題に泥臭く対処するヒントを充実させました。読者の皆さんの現実の実務に役立つことを期待しています。
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