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音楽がわかるとは、難解な暗号を覚えることとはちがう。それは、聴いて楽しむことを意味するにすぎない。……とはいえ専門知識があれば、自分の大好きなものを聴くとなぜ楽しいのかがわかる、という見返りがある。
(「まえがき」より)
18世紀から20世紀初頭まで、バッハからアルバン・ベルクにいたる作曲家たちはどのようにして、聴き手の感情を波立たせる美しい曲をつくったのだろうか。しかもその方法は時代とともに、とくにベートーヴェン以後はドラスティックに変化した。
心憎いほど音楽を知りつくした音楽理論家・ピアニストが、古典派以前からロマン派以後までの名曲〓〓〈シャコンヌ〉から《ヴォツェック》まで〓〓を例に、繊細な表現の構造と、計算しつくされたからくりを分析する。協和音と不協和音の緊張と解決の方法が変わると、表現はどう変わるか。ハ短調が注目に値する理由は何だったのか。
「驚きなのは、緻密な分析と専門的なアプローチをしながら、みごとに感動的なことだ」(『ガーディアン』紙評)
巻末には愉しい付録が付く。2010年にともに生誕200年を迎えたショパンとシューマン、それぞれを祝うエッセイ。
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