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「どうりで捕まらないわけだ」(道尾秀介)
自転車全国一周に扮した富田林署逃走犯、尾道水道を泳いで渡った松山刑務所逃走犯、『ゴールデンカムイ』のモデルとなった昭和の脱獄王……彼らはなぜ逃げたのか。なぜ逃げられたのか。
異色のベストセラー『つけびの村』著者は、彼らの手記や現場取材をもとに、意外な事実に辿り着く。たとえば、松山刑務所からの逃走犯について、地域の人たちは今でもこう話すのだ。
〈不思議なことに、話を聞かせてもらった住民は皆、野宮信一(仮名)のことを「野宮くん」「信一くん」と呼び、親しみを隠さないのである。
「野宮くんのこと聞きに来たの? 野宮くん、って島の人は皆こう言うね。あの人は悪い人じゃないよ。元気にしとるんかしら」
「信一くん、そんなん隠れとってもしゃあないから、出てきたらご飯でも食べさせてあげるのに、って皆で話してました。もう実は誰か、おばあちゃんとかがご飯食べさせてるんじゃないん、って」〉(本文より)
【編集担当からのおすすめ情報】
『つけびの村』で山口連続殺人放火事件を「村人たちの噂」という視点から見つめ直した気鋭のライターの、新たなテーマは「脱走」。警察に一度は捕まりながら、脱走に成功してしまった者たちの告白や足跡は、読む側に“禁断のスリル”をもたらすことでしょう。なぜ人は脱走にスリルを感じてしまうのか、それはいけないことなのか。著者はこの本でそう問いかけます。特別収録された作家・道尾秀介氏との対談でも、犯罪とフィクション・ノンフィクションとの距離感について議論を交わしており、そこも読みどころの一つとなっています。
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