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2021年7月。新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を襲うなか、史上初めて1年延期となり、基本無観客で開会式をむかえた「東京2020オリンピック・パラリンピック」がはじまった。東京が開催地に決まった2013年から8年。東京都が候補地に名乗りをあげた2005年から説き起こせば16年前から、この「東京で開催される世界的なスポーツの祭典」ははじまっていた。
石原都知事もふくめ3人の都知事の辞任、安倍首相の辞任、新国立競技場のデザイン変更、ロゴマークの変更、組織委員会会長の辞任などなど、準備期間からして、新聞の一面から社会面まで、これほど長期にわたって話題になったイベントは今後そうはないだろう。
開催国・日本と開催都市・東京がこのイベント・マラソンを完走したいま、この道のりを冷静に振り返り、客観的に検証する作業が必要だ。「東京2020」大会をめぐる様々な動きは、日本が直面する状況を広く映し出してきた。それを省みることは、日本の社会や政治のあり方を問うことにもなる。もちろん、スポーツが社会や人々に与える力という普遍的なテーマについても振り返るべきだろう。そこで、読売新聞社の「東京2020オリンピック・パラリンピック取材班」は、アスリートの活躍がもたらした興奮や感動の余韻がまだ残る中、ただちに取材の記録と記憶を残す作業に着手した。
本書を構成するにあたっては、まず重要な節目で読売新聞が報じた記事を再録し、紙面画像も紹介することで、その出来事が生じた時の臨場感を再現してみた。大会の主役であるアスリートたち、それを支える周囲の人たちや関係者のエピソードを盛り込み、ヒューマン・ストーリーを紹介することも心がけた。
大きく変動する国際情勢、今後も予想される感染症、深刻化する環境問題など、オリンピック・パラリンピックを取り巻く状況は厳しい。また、IOCやオリンピックのあり方自体にも疑問の声が少なくない。その中で、札幌が冬季大会にふたたび名乗りを挙げる動きを見せている。私たちは今回の2020大会から何を学び、将来にどう生かしていくのか。本書がそれを考える素材の一つとなれば幸いである。
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