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複雑な方程式を何とかして取り扱いやすい見かけの粒子に対する有効方程式に焼き直すこと,このような独立粒子描像としての現象の捉え方は我々の考え方の基本をなし,限界にもなっている。独立粒子描像に基づく第一原理計算手法としてHartree-Fock近似が有名であるが,今日では密度汎関数理論に基づくKohn-Sham理論が標準的計算手法として広く用いられている。量子化学分野では多体波動関数を直接求める配置間相互作用と呼ばれる計算手法も用いられているが,独立粒子描像にマップするために自然スピン軌道という概念が導入される。さらに,多体摂動論のGreen関数を用いた準粒子理論によれば,光電子分光の実験とタイアップして,始状態と終状態の1電子分の差が準粒子と定義され,その独立粒子描像の下でスペクトル計算が可能となる。
著者らは,この準粒子理論を任意の電子励起固有状態を初期状態とする一般の場合に拡張した「拡張準粒子理論」を提案し,その理論の有効性を実証してきた。さらに,この拡張準粒子理論と厳密な拡張Kohn-Sham理論の間に存在する関係を解き明かした。
本書は,これらの研究成果を含め,多数の原子からなる現実の物質を量子多体系としていかに正確に取り扱うかという問題に焦点を絞り,現実の物質材料の諸特性を予測するための第一原理計算の理論的基礎と方法論を解説する。
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