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第60回野間児童文芸賞受賞作!
「少女の不安を秘めながら毅然とした姿に心打たれる。余韻のある強く凛々しい物語」あさのあつこ氏
「長年支援学校での仕事に携わってきた作者だからこそ、作り上げられた世界です。それは人々の善意に支えられた世界ですが、それこそ作者の願であり、読む者への希望へと繋がります。子どもの本を書くという志において、敬意を感じる作品」いとうひろし氏
「最も感情移入して読んだ作品です。最後がどうなるのか気になって気になって仕方がなく、途中で何度もエンディングを読みたくなりました。中略 えてしてセンチメンタルになったり、教条主義的になったりしがちな題材を、ひとつの作品としてここまできっちり組み上げるには強靱な精神力が必要」金原瑞人氏
「この物語に触れる時子ども達は、自分と違って見えるすずの中にも、自分たちと同じ……いえ、それ自分たち以上に色どり豊な世界が広がっていることに気づかされるでしょう。」富安陽子氏
『ようやく書けた物語』
私は、知的障がいのある子ども達が通う特別支援学校で、教員として三十年近く働いています。その間、小学校や中学校の子ども達を主人公にした物語を書き続けてきましたが、自分の学校の子ども達を主人公にできないことに長く歯痒い思いをしていました。重い障がいのある子ども達の心の内を文章として表現することの難しさと果たして自分が表現してよいのかという葛藤に、なかなか一歩踏み出せずにいました。
悩み、試作を繰り返した末にようやく書き上げることができた物語が本書なのですが、果たしてこれでよかったのかという不安は今も重く残っています。ですが、今回この賞をいただけたことで、ようやくなんらかの許しを得られたような気もしています。
ーー著者受賞のことばより
ねえねえ。なに話してるの?
そんなふうにいえればいいんだけど、わたしはおしゃべりができないから。
おしゃべりしようって思っても、頭のずっとおくのほうでなにかがちかちかってするだけ。お口もじょうずにうごかせないし、もうしかたないなぁって思ってる。本文より。
重度の知的障がいのある小五の女の子、発語できない、すずと、お兄ちゃん、同級生、先生、保護者たちなど周りの人をめぐる優しい物語。
『ふたり』が青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『香菜とななつの秘密』が厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれるなど、特別支援学校で長く現役教師をつとめながら児童文学作家としても活躍する、福田隆浩氏作。
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