本書は一般的な釣り場ガイドブックとは一線を画しており、魚をガツガツと釣りにいくためのものではない。あくまでも釣りを旅の一部と位置づけ、釣り場周辺の「そば屋」、「温泉」、「道の駅」、「キャンプ場」、「宿」などの情報を詳細に調べてまとめた本である。釣りという遊びは、魚が釣れてこそ楽しい。それは間違いない。だからこそ釣り人は技術に、道具に、場所にこだわる。問題は「釣れないと楽しくない」という負の側面であり、釣れないと、旅そのものが楽しくなってしまうことである。時間とコストを掛けた旅が「釣れない」という1点だけで、ツマラなくなってしまうのはあまりに切ない。かつて開高健は「退路のない戦いはしてはならない」と語ったが、本書はまさしくその退却方法について書かれた本である。釣れなかった場合のことを想定して、そば屋、温泉、道の駅、キャンプ場、宿などが充実した釣り場が選ばれている。釣りが生物相手の遊びである以上、いつでも爆釣なんてことはあり得ない。釣り人は夢を追うが、現実的には「思ったように釣れない」ことの方が多いのが、日本の渓流釣りの実態なのだ。本書は楽しい旅をしたい釣り人にお薦めしたい、山釣りの総合ガイドブックである。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。