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人間学については古代から現代まで多くの学説がある。プラトンの観念論的人間学をはじめ,ヘブライズム信仰による人間学,哲学と信仰を統合するアウグスティヌスや中世の人間学,啓蒙時代の理性的で自然主義的な人間学,ヘーゲル哲学を解体したフォイエルバッハやキルケゴールの人間学など。そのなかで哲学的人間学の成立にはカントとマックス・シェーラーの貢献が多大であった。
哲学的人間学は,シェーラー『宇宙における人間の地位』(1928年)をきっかけに,同年にヘルムート・プレスナーが『有機体の諸段階と人間――哲学的人間学入門』を刊行し,人間の存在を全体的に考察する学問として確立した。
シェーラーは,新たな展開をした生物学や個別諸科学と現象学的方法により,人間学の基盤を確立した。彼は価値倫理学と形而上学を経て人間学に至ったが,同時に禁欲原理としての「精神」の中に「人間の特殊地位」を見出した。さらにプレスナーは有機的自然界に対する「人間の特殊地位」を人間の「脱中心性」により捉えた。
人間学とは「自己自身についての知識」である。自己認識こそ芸術,宗教,哲学における知的探求の目的である。本書は一世紀にわたる多様な研究成果を,対話と関主観性の観点から総合的に考察した,最新の本格的概説書である。
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