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写真師として日本初の帝室技芸員となった小川一眞。その知られざる生涯と事績を明らかにする画期的大著。
小川一眞は明治中期から大正期にかけて写真撮影から印刷、出版、乾板製造など、写真を軸とした一連の事業を展開し帝室技芸員を拝命した人物である。帝室技芸員とは、1890年に皇室による日本美術工芸の保護奨励を目的として定められた「帝室技芸員制度」により任命された美術家であり、小川は写真師として唯一選ばれた。その作品は旧千円札に使われた夏目漱石の肖像などで知られるが、撮影者としてだけではなく、印刷技術の革新、写真乾板の国産化を試みるなど日本の写真文化の発展に影響を与えた。
九鬼隆一やフェノロサの美術史調査にも同行し多くの文化財を撮影するとともに、日本各地の名所や風俗、文化財をはじめ、日清・日露戦争、明治天皇の大喪の礼、濃尾地震など数多くの題材を写真に収めた。特に日露戦争時には『日露戦役写真帖』『日露戦役海軍写真帖』を印刷・発行し、写真による戦争報道の先鞭をつけた。また1901年には中国・北京城(紫禁城を含む城壁で囲まれた市街地を含んだ地域)の撮影も行う。
本書では明治から大正という「変容する帝国」と生涯を共にした、未だ知られざる「写真メディアの体現者」の生涯をその撮影した膨大な写真とともに明らかにする。詳細な年譜、索引を付す。
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