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〝映画の魔〟に魅入られて、
映画、この欲望と快楽のメディアを題材として取り上げるのみならず、媒体の特質、俳優の身体、興行形態、鑑賞行為といった構造的要素までをも小説へと移植した谷崎潤一郎。
その強靭なる映画的思考/欲望は、いかにして〝映画小説〟の血肉となったのか。
映画の富を小説においても展開し、みずからの文学に新生面を開くまでの作家の足跡を緻密にたどり、谷崎文学のさらなる深みを開削する。
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谷崎は映画という存在をメディア/芸術/産業面から複層的に捉えて物語化した点で、現代に至る文学と映画の協働関係における先駆の作家と位置づけられる。……映画小説において、谷崎は映画を単に尖端的な題材として恣意的に選択したのではなく、媒体的特質や流通過程を有機的に文脈化した。映画を観る、あるいは消費し、愛玩する行為と空間をその在り方に仮託して表象したのだ。(序章より)
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