どう診る?急増する非結核性抗酸菌症,見逃せない結核
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結核は、マラリアとHIV感染症と並んで、世界的な三大感染症に挙げられている。今なお世界人口の3割に当たる20億人が結核に感染している。しかし結核感染者の9割は、正常な免疫機能によって生涯発病せずに、いわゆる潜在性結核感染症として経過する。
本邦の結核罹患率は年々減少傾向にある。結核登録者情報調査年報によると、本邦における結核の罹患率(人口10万対)は10.1(2020年)まで低下してきた。ただし「罹患率10.1」は、世界的に見ると中蔓延国の位置付けであり、本邦において結核は決して「撲滅された過去の病気」ではない。
本邦の結核患者の多くは、高齢者が占めている。青年期に感染した潜在性結核感染症者が、加齢による免疫力の低下とともに結核を発病しているものと思われる。発病の原因としては、糖尿病・悪性腫瘍・珪肺・HIV感染症といった疾患や、血液透析・臓器移植・胃切除・ステロイドや生物学的製剤の使用といった医療行為や、さらには喫煙・飲酒・低栄養状態などが挙げられる。特にこれらの発病危険因子が重複するような臨床状況においては、潜在性結核感染症を疾患として積極的に治療することが勧められている。
また結核の患者層も少しずつ変化してきている。高齢者の潜在性結核感染症からの結核発病が、結核患者全体の多くを占めていることは以前から同様である。しかし20歳代や30歳代の結核患者に限ると、外国生まれの患者が多くを占めるようになってきており、耐性結核菌の移入が懸念されている。
結核の患者数が減少してきている一方で、非結核性抗酸菌症の患者数は増えてきている。2014年の全国調査によると、本邦における肺非結核性抗酸菌症の罹患率(人口10万対)は14.7と推定されている。非結核性抗酸菌は住宅内の水回りや土壌など、環境中に広く生息している。患者数増加の原因として、シャワーの使用といった生活様式の変化や地球温暖化などが想定されているが、正確な原因はわかっていない。
肺非結核性抗酸菌症の9割は、M. aviumとM. intracellularを合わせたM. avium complex(MAC「マック」)によるものであり、クラリスロマイシンを主薬とする抗菌療法が行われている。しかしその治療効果は十分ではなく、再発再燃して難治化することも多い。そして肺MAC症の難治例に対しては、アミカシンの吸入用製剤が昨年2021年7月に発売開始となっている。
このように結核と非結核性抗酸菌症を取り巻く状況が変わりつつある中で、本特集号では、I. 結核と非結核性抗酸菌症の鑑別、II. 非結核性抗酸菌症各論、III. 結核各論と3つのパートに分けて、各分野のエキスパートの先生方にご執筆いただいた。本特集号が、若手呼吸器科医や呼吸器科医を目指す後期研修医をはじめ、広く臨床に携わる先生方に、結核と非結核性抗酸菌症を理解していただく一助となることを願っている。
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