明日から役立つ疾患・場面別アドバンス・ケア・プランニング

明日から役立つ疾患・場面別アドバンス・ケア・プランニング

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出版社
南江堂
著者名
福井小紀子
価格
3,520円(本体3,200円+税)
発行年月
2022年4月
判型
B5
ISBN
9784524228348

近年特に注目を集めているアドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてビジュアルに解説.がんはもちろんACPの対象となりうる代表疾患・症候がたどる典型的な経過に沿って , 外来~入院~退院後と様々な場面でのACPについて解説している .会話例や事例も豊富で,患者・家族・チームへの関わり方もよくわかる!患者さんのために今すぐACPを実践したい若手ナース,ワンランク上のACPを実践したい中堅ナースの悩みを解決する一冊.

【書評】
 「今年の桜はもう見られないっていわれたよ」  医療の現場に身を置いていると,何気ない会話の中で,清拭をしている時に,検温の途中で,そんなふとした時に目の前の患者さんからポロっと発せられる言葉に私はドキッとさせられることがある.そんな時は一瞬,言葉に詰まる.何を話せばよいか逡巡する.そのような経験を幾度もすることがある.あの時,私の選んだ言葉が正解だったのだろうか,そもそも正解があるのだろうか.普段奥に隠れている患者の思いが顔をのぞかせるような瞬間は本当にふとした時に訪れる.

 この本にはたくさんの場面,事例が登場する.人は自分の経験だけでは世界の広がりをもつことはできない.他者の経験を知り,学び,当てはめることで,同じようなことが起こったときに対処できるようになる.だからこそ事例から得られる学びはよりよいケアにつながる.がん,心不全,呼吸不全,老衰とではその疾患の違いによって,経過によってもいつ,どのタイミングがアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の時期なのかが異なる.事例を読むと,なるほど,このように考えて話し合いを進めるのか,と役に立つ.病院,在宅医療・訪問看護,居宅系サービス,どの場であっても,連携することでより希望に合わせた選択肢を広げることができる.

 患者さんから発せられる言葉にドキッとさせられた時は,そこをスタートとしてこれからの生き方を一緒に考えていくきっかけとなる.そのためにタイミングを逃さずにACP につなげるためのとっさの一言の引き出しを増やしておかなくてはと思う.そのヒントは本書の掲載事例や会話の詳しい解説,“Point とっさの会話例“に散りばめられている.

 目の前のこの人にとって桜はどのような意味をもつのだろう,今どのような気持ちでいるのか,これまでどのような道を歩まれてきて,これからの生き方にどんな希望をもっているのだろうか.本書の先人の経験は,これからの道をともに考えるACP の糧になる.

がん看護28巻3号(2023年3-4月号)より転載
評者●山上 睦実(東京大学医学部附属病院/がん看護専門看護師)

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