菓子変敗の科学

菓子変敗の科学

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出版社
幸書房
著者名
内藤茂三
価格
6,820円(本体6,200円+税)
発行年月
2022年4月
判型
A5
ISBN
9784782104637

本書「まえがき」より
 日本では長い間,菓子といえば果物であり,江戸時代には,果物は水菓子と呼ばれていた.すなわち,菓子と同じように,甘味のある嗜好品として用いられていた.つまり菓子の祖先は果物である.
 菓子の代名詞は砂糖であるが,菓子の歴史の中で砂糖の普及は比較的新しく,これに対して原始古代のころから作られていたのが飴である.砂糖についての信仰や民俗が少ないのに対し飴にかかわるものは全国的に分布する.飴とは,主に穀物や芋などのでん粉と麦芽を原料とする麦芽飴である.菓子の初めが木の実や果物であったことから,甘いものが菓子であるとされた.
 人々が生を受けてから土に戻るまで,種々の行事があるが,必ず菓子が配されている.出生の祝い,初節句,誕生祝い,七五三の祝い,入学・卒業祝い,成人祝い,就職祝い,結婚祝い,快気祝い,賀の祝いなどがあり,これらには餅や饅頭などの引き菓子が使われている.季節の移ろいを告げる菓子,人と人の交流を拡大する菓子,社会儀礼での菓子,喜びや悲しみに心通わせる菓子,団結の和を拡げる菓子,恋を囁く菓子,泣く子をあやす菓子などが生活の中に溶け込んでいる.これだけ多くの祝事に使われ愛されている菓子に微生物変敗があれば広くその影響が及ぶ可能性がある.
 菓子の微生物による変敗の難易は菓子自体の水分,糖濃度によって基本的には規制されるが,原料,製造工程からの微生物の汚染の多少,熱処理の程度,保存料使用の有無,さらには菓子保存中の温度,湿度と外部からの二次汚染の様相によって変化する.このことは菓子の微生物による変敗は人間が関与していることを示している.菓子変敗は特に湿度に大きく関係し,カビ,酵母,細菌が増殖する.ことに菓子の保存中の湿度条件は保存性に重要な関連をもち,吸湿により外気の水分が菓子の表面に凝縮すると,まず表面にカビが生育し,さらに酵母,細菌の侵害がおきる.
 微生物による菓子変敗は一定の規則に従って生成するので,原因解明および標準対策の設定は菓子業界全体に貢献すると考えられる.色々な菓子や様々な条件の下で効果的であることが立証されている方法は,基本的な関係に従って収集し分類されるならば,同一または異なった条件の下での他の食品や,様々な条件において効果的であると立証された方法と比較することができる.したがって,この基本的原理は,合理的な思考の方向および健全な判断の形成を示すものとなる.菓子もこのような,昔の身土不二の形態から,現代の欧風型に変化してきている.
 菓子変敗と防止対策についてできるだけ多くの事柄を紹介するように努めたが,行き届かない点や不十分な点も多く残っていると思う.また,著者が間違って理解している点があるかもしれない.この点については読者の方々からのご意見やご批判を頂きたいと思っている.
 本書が菓子変敗の機構に注意を喚起し,この分野で研究する端緒になれば著者の望外の喜びになるであろうと信じている.

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