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これまでの西洋哲学史では文化についての知は常に周辺に扱われ,その本流は言語,論理,理性といったロゴスに重きをおき,人間の多様な営みである文化を捨象することを原則とした脱文化・超文化的なものであった。
「文化哲学」は,抽象化された一般概念としての文化ではなく,人間の生きる現場である「文化的事実」を頼りに,多様でつかみどころがなく,いまやそれ自体が問題となった「文化」に分け入っていく探求である。
20世紀初頭,科学技術の進歩により文明が極まり第一次世界大戦を象徴として人間がつくり出したものがいまや人間を脅かす,文化の危機という認識が広く共有されていた。ヨーロッパ文化の危機への対処としてジンメルによりキーワード「文化の悲劇」が提示され,カッシーラーがそれを批判することで「生の哲学」から自立した現代の「文化哲学」の道を拓いた。
さらに著者は「批判」「制作・作品」「迂回」という文化哲学の中心概念を示し,その体系・理論を展開する。
本書は,テクノロジーによる進歩の先に見るポスト・ヒューマン的世界観や資本主義システムを推し進める加速主義が広がりを見せる時代に,あえて立ち止まり,別の可能性を探求するプロジェクト,現代文化哲学のマニフェストである。
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