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これは、ヨーロッパ文学について今世紀に書かれたおそらく最も重要な書物であり、今後、ヨーロッパ文学または文化を語るとき、つねに念頭におかるべき書物である。
ヨーロッパとはたんに地理的名称をいうのではなく、固有の伝統を有するひとつの「意味統一体」である。クルツィウスは歴史研究の根底をなすひとつの学問的技術たる文献学を駆使することにより、この事実を見事に証明する。西洋文化のもつ空間的時間的統一性をあらたな方法によって照らし出す試みにおいて、ひとつの立脚点となるのは、ウェルギリウスとダンテのあいだに横たわる十三の世紀の教養語たる「ラテン語の世界」である。もうひとつはギリシア、ローマから十六、七世紀に至るあいだの諸文学、すなわちヨーロッパ文学である。かかる楕円構造よりなる広大な文学空間を、著者は細心に精査しつつ、各テキストのなかに文学的伝統の連続性を探りあてる。
「文学」という言葉の出自、「古典的著作家」の概念の歴史、「マニリスムス」と定義される反古典主義的諸潮流、そして「トポス論」などの諸テーマについて、歴史的な詳述がなされ、読者はおのずとヨーロッパ文学の全体考察へと導かれる。
「文学の現象学」を志向する厳密な方法論にもとづきながら、これはまたその背後に現代西洋文化にたいする危機意識をもった文明批判の書物である。ナチの神話と暴力による「尺度と価値」の崩壊、それにひきつづく不毛な「荒地」としての現代的情況。これに対抗して、本書は遠く中世を根拠地にとりながら、あらたな人文主義の旗のもとに知的迂回戦を展開している。デラシネの時代にあって、文学的伝統の根元を歴史的に証明した本書が、ゲーテ賞を得たことはきわめて当然のことといえよう。
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