吉本隆明論 思想詩人の生涯
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拮抗する詩と批評の深部へ
ここでわたしがやろうとしたことは、これまでの膨大な数の吉本隆明論のほとんどが疎外している、少年時代にさかのぼる最初期の詩篇から、晩年の『記号の森の伝説歌』『言葉からの触手』までの詩の解読を試みることだった。これはわたしが吉本隆明を思想家としての一側面ではなく、彼が思想領域を論理的に扱っている時でも、根本的に思想詩人としての感覚や想像力が働いている、と考えていることに基づいている。評論は吉本にとって、部分であっても、詩は彼の全体であり、その源である。/それにもかかわらず、彼の思想論や文学理論が、今日では批判的な検討を要するとしても、同時に誰の追随も許さない独立した価値をもっていることは確かだ。それでわたしは、自らの非力をかえりみず、「マチウ書試論」や『文学者の戦争責任』、『言語にとって美とはなにか』、『共同幻想論』なども、ひるまず考察の対象にした。―――北川透
吉本隆明は詩人であり、詩を核心に抱いた思想家だ。詩や詩論のみならず、政治、哲学、宗教など、すべての知的冒険に、詩的な発想・想像・跳躍・切断が生き生きと働いている――。戦前・戦中における詩の〈始まり〉から、『固有時との対話』『転位のための十篇』をへて晩年の作品群まで、その生涯の詩を読み解く。六〇年代以降、同時代において吉本の詩と思想に全身で向きあってきた著者が、自身の数多くの吉本論を解体し、全篇を新たなかたちで構想した畢生の書。装幀=間村俊一
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