木更津市教育委員会と国立歴史民俗博物館が3 期9 年にわたり進めてきた共同事業は、今日的な視点で金鈴塚古墳出土資料を整理検討し、金鈴塚古墳を古墳時代研究のなかに改めて位置付けることを目的としたものである。金鈴塚古墳は、古墳時代後期を検討する基礎資料でありながら、発見や報告の時期が早いため、資料の全貌は明らかにはなっていなかった。古墳時代研究の基礎をなす重要資料には、こうした状況あるにものが多い。近年では、兵庫県雲部車塚古墳や大阪府七観古墳、奈良県五條猫塚古墳など、発見や報告の古い重要資料の再整理報告が続いている。これらと同じく、現代的な視点で、金鈴塚古墳出土資料と金鈴塚古墳を研究の基礎資料に新たに位置付けることがこの事業の目的である。
2020 年には大部3 分冊からなる『金鈴塚古墳出土品再整理報告書』(本報告)が刊行され、木更津市での事業は、その成果が公開されている。歴博では、事業を推進するとともに、折に触れより広く一般に向けた情報発信に取組んできた。本書の目的は、手に取りやすい、より身近な形で、金鈴塚古墳とその出土資料の情報を発信することにある。
金鈴塚古墳出土資料は、奈良県藤ノ木古墳や、群馬県綿貫観音山古墳など国宝に指定される重要資料と比較されることもある。その壮麗さに目は奪われがちだが、壮麗な品々は、「さいご」の前方後円墳に副葬された。本書では、その壮麗な副葬品が終焉を迎える前方後円墳に副葬されたことの意義を、さまざまな視点から照射してゆきたい。そこに、古墳時代後期の社会とその終焉の歴史的意義が展望されてくるように思う。
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