産業ロボットや掃除ロボット,および自動運転など幅広いシステムの性能を保障するため,制御理論が必要である。一方,大学の制御理論関連授業は,主にモデルに基づく分析的手法を中心に,制御理論を教えているため,数学が多く使われ,学習者が短期間でその真髄を理解するのは非常に難しい。著者らは長年大学生や技術者を対象に,制御理論について教鞭を取ってきた。近年,ScilabやMATLAB/Simulinkなどのソフトウェアは,学修中のアハ体験に大きく促進し,学習者が自分で発見的に学修することを容易にしている。本テキストも,MATLAB/Simulinkを勉学のツールとして使用することを前提としている。また,近年,グローバル化に伴い,一部の授業を英語で行う大学も増えており,高校レベルの英語で制御理論の専門知識を平易に解説するテキストは学修の垣根を低くするのに重要である。これらのことを背景に,英語で本テキストを執筆することにした。
【読者対象】
制御に興味のある大学生,専門学校生,技術者。高校数学II程度の数学知識が必要。
【書籍の特徴】
難しい数式の導出は最小限にし,基本概念およびその物理的な意味をわかりやすく説明し確実に理解できるようにした。特に,アームロボットと台車型倒立振子という二つの物理系を対象に,制御問題と手法を一貫して検討している。また,章末問題を基本と発展に分け,自分で進んでチャレンジできるようにした。
【各章について】
第1章では,具体的な制御例をあげて制御の基本概念を説明し,制御工学で学ぶことを述べている。
第2章では,制御を勉強するために,最小限の数学基礎を導入している。
第3章では,簡単な機械要素と電気回路の常微分方程式からシステムの内部状態を表現する手法(状態空間表現)を説明した後,ラプラス変換を導入して伝達関数の必要性を理解する。さらに,非線形システムをどのように線形近似するかを,具体例を通して述べている。
第4章では,ブロック線図によるシステム表現法とシステム分析ツールである周波数応答の概念を説明している。
第5章では,まず,簡単な1次系と2次系を使って,動的システムの挙動を理解した後,システムの安定判別法を述べている。前半のこれらの内容により,後半の制御系解析・設計の基礎を築き上げる。
第6章では,制御系解析の基本的な考え方を説明し,特に,1次系と2次系を基に,システム設計で主に用いられている各種パラメータとそれらの関係を説明している。
アームロボットを例に,第7章では伝達関数に基づく設計法を,第8章では状態空間での設計法を説明している。
第9章では,制御系実装に係る問題と解決法を述べている。
第10章では,制御性能を高めるために,アームロボットを例に,伝達関数を用いて制御則をどのように改善していけばよいか,ステップバイステップで説明している。また,台車型倒立振子を例に,状態空間で制御性能改善のシステム構成を,順を追って説明している。
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