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当事者の語りを現象学的に分析し,心の回復へと導く
語ることすらタブー視されがちな人工妊娠中絶であるが,近年の超音波診断やNIPT(出生前遺伝学的検査)の広がりにより,医療や法律面からは様々な議論が行われている。その一方で臨床心理学的領域では,流産や死産経験者などに比べ,人工妊娠中絶経験者に対する心理ケアが十分になされているとは言い難い。人工妊娠中絶は「個人的なこと」で罪悪感が強く,医療スタッフにとっても大きな葛藤を抱える出来事とされているためである。
本書はそうした状況に一石を投じるべく,詳細なインタビュー調査や質問紙調査をもとに,当事者にどのような心理的ケアが必要かつ可能なのかを探ってゆく。
3部構成のうち第1部では,周産期の喪失,人工妊娠中絶に関する歴史と現状,出生前診断について触れるとともに,周産期の喪失体験によって引き起こされる可能性がある悲嘆反応やPTSD(トラウマ=心的外傷後ストレス障害)について論じる。
第2部では人工妊娠中絶に関する調査研究を提示する。当事者へのインタビュー調査及び質問紙調査の結果から,その内的世界を描き出したうえで現象学的分析を用い,体験のありようについて考察する。さらに,当事者同士の交流会の実施についても言及する。
そして第3部においては,人工妊娠中絶の特殊性を考慮しながら心理臨床家がどのように関わってゆくことが出来るかを総合的に検討する。
また,コラムでは,スウェーデンでの周産期喪失心理ケアの現場を訪問したレポートを収録する。
人工妊娠中絶経験者の詳細な語りを取り上げて分析した書籍としては,日本でほぼ初めてと言ってよく,臨床心理士のほか,医師,助産師,看護師などが実践の場で生かせる一冊である。
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