交通は、とても身近なものです。敷地の外を人や車などが移動することを「交通」と定義するならば、ほとんどの人が毎日のように交通を行っているはずです。仮に家を一歩も出ない日でも、宅配便が荷物を届けてくれたとしたら、宅配便業者による交通の恩恵を受けたことになります。宅配便が届かない日でも、表通りを通るトラックの騒音がうるさいと感じたら、交通からの影響を受けたことになります。
このように、誰にとっても当たり前のような交通の世界なのですが、ひとたび、渋滞を解消しようとか、交通事故をなくそうとか、あるいは道路や鉄道の計画を立てようとかいったことを考えると、とたんに専門性のきわめて高い分野になります。本書が主に扱う道路交通に関しては、「交通工学」や「交通計画」という名前の講義が工学部の主に土木系の学科で講義されています。
本書は、これから「交通工学」や「交通計画」を専門的に学ぼうとする学生に、「身近な交通」からの橋渡しをすることを目指して書かれました。ここで書いてあることを「読んで学んで」頂ければ、講義で学ぶことの意味や意義が理解できるように、入門的な内容をさらにかみ砕いて記述したつもりです。
また、現今、交通分野が大きな変革を遂げつつあり、ICT の急激な進展に伴い、ビッグデータの活用など、交通調査の内容や手法がすでに大きく変貌しました。そのことはまた、交通計画自体の変革ももたらしています。交通工学の分野においても、平面交差点の計画設計手法や生活道路対策など、著しい進展が見られた分野がいくつも存在します。さらに、歩行者や自転車の扱いをはじめとする、「人中心」のみちづくりの方向性が完全に定着するに至っています。
今回の改訂ではこれらを踏まえ、執筆陣に新たに若手に加わってもらい、世の中の動きに敏感に対応するように努めたつもりです。できるだけ多くの方にお読みいただき、ご批判を仰ぎたく思う次第です。
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