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「大工道具は歴史を有する。作った人の歴史、使った人の歴史、そして太古より受け継がれ、伝統の中で育まれてきた技術の歴史を身にまとう。
道具鍛冶はすぐれた切削性能を追い求めて槌を振るい、鋼を鍛えた。大工たちは思いどおりの工作を実現するために台や柄を自分で作り、調整し、刃先を研磨する。尋常ではない手間をかけて、過去の名工、名人にひけをとらぬよう、ありったけの技と思いを道具に注ぎこむ。
写真家、秋山実の当てる抑制された光に、道具の輪郭と鉄肌が、鍛冶屋の槌跡や成形のヤスリ目が、大工に使い込まれて艶めく台や柄、使い減って変形しつつある刃が、静かに反射する。うるさい演出を極力排し、静かで熱をおびない、輪郭のはっきりしたその写真は、すこし冷たいとさえ感じられる。しかし、人間が使う道具の真実は、その冷たさや異物感にあろう。上手な職人ほど、手の延長ではあっても手そのものではない道具の異物感をこまやかに感知しつつ、仕事をするのだから」(土田昇)
刀工から大工道具鍛冶へ転身した鍛冶名工、千代鶴是秀の幻の傑作、鎬大突鑿「神嶺」はじめ、古くは鎌倉・室町から平成に至るゆたかな鍛冶文化の系譜。半世紀余にわたり貴重な大工道具名品を撮ってきた写真家、秋山実による初の集大成、全222点。
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