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ナンシー哲学の核心に迫る
共同体論にとどまらない思想の全貌
現代フランス哲学の巨星ジャン=リュック・ナンシー。共同体論がつとに名高いその思想家は、150余りの著作を残し、2021年惜しくも世を去った。本書でははじめて、50年に及ぶ活動の全体を見据え、共同体論にとどまらないその思考の核心に迫る。鍵となるのは不定の二人称への言表行為。初期の人格主義から、デリダへの接近、主体、共同体、分有といったテーマの発展からキリスト教の脱構築へ。いまだ全貌が明らかではない哲学者に新鋭が挑む。
○目次
序論
第一章 人格主義の影――一九六〇年代のナンシーの思考について(一)
第一節 ムーニエの人格主義――召命の起源論と人間の目的論との絡み合い
第二節 人格主義の批判的継承者としてのナンシー――一九六三年「ある沈黙」
第二章 デリダとの出会い――一九六〇年代のナンシーの思考について(二)
第一節 根源的なものとしての差異――一九六六年「マルクスと哲学」
第二節 アナーキーな書き込み――一九六九年「注釈」
第三章 言表行為と不定の人称――一九七〇年代の主体論について
第一節 カントにおける空虚な主体――『文学的絶対』の主体論
第二節 ヌーヴォー・フィロゾフに抗して――『エゴ・スム』をめぐるコンテクスト
第三節 思想史のなかの主体――ハイデガーにおける「主体」と「現実性」
第四節 前コギト的なもの、尖端としてのコギト、沈黙のコギト――ナンシー、デリダ、メルロ= ポンティ
第五節 開始点としての言表行為――主体の崩壊
第六節 「誰か」という不定の人称
第四章 言語から存在へ――一九八〇年代の共同体論について
第一節 「分有」という語の登場――一九八二年『声の分有』
第二節 存在は言語に先立つ――一九八三年「無為の共同体」
第三節 存在から世界へ――『無為の共同体』以後の思想展開
第五章 意味と投壜通信――不定の二人称への言表行為
第一節 意味と意味作用、意味と真理
第二節 古名の戦略と人格主義の残響
第三節 キリスト教の自己脱構築から言表行為へ――脱閉域からアドラシオンへ
結論
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