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軍事同盟の歴史において,太平洋戦争中の日タイ同盟ほど奇妙なものはない。なにしろ,「敗戦国」であったはずのタイは,大したお咎めもないどころか,抗日勢力として認められたのだ。この二面外交についての研究はすでにある。しかし,では「味方であって味方でない」関係が,普通の人々――タイ民衆と現場の日本兵――の間では,どんな様相だったのか? タイ国立公文書館に保存される,日タイ間の事故,騒動,盗み,襲撃といった事件の膨大な記録を一つ一つひもとき,その地理的・時期的分布や背景,処分などを多角的に分析することで,いわば「我慢の同盟」であったその実相を生き生きと描き出す。
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