米中対立の先に待つもの

米中対立の先に待つもの

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出版社
日経BPM(日本経済新聞出版本部)
著者名
津上俊哉
価格
1,980円(本体1,800円+税)
発行年月
2022年2月
判型
四六判
ISBN
9784532177188

中国の膨張主義は永続きしない
中国は「振り子」のように変わる。米中対立は大変化の前奏曲にすぎない。1930年代に類似する世界秩序大変動の可能性を見据え、中国で起こっている変化、米中新冷戦の未来を大胆に読み解く。

〇中国は振り子のように歴史を繰り返す。強固な共産党支配の貫徹、米国に取って代わる覇権追求がいつまでも続くことはあり得ない。「中国共産党は建国以来、やがて米国に取って代わることを企んできた。その野心を隠して西側を騙してきた」という「100年マラソン」説 は誤りだ。中国は今後、どういう要因によって、どう変わるのか。それを正確に予想することこそ喫緊の重要課題だ。

〇世界も大きな変化に見舞われている。コロナ・パンデミックを契機に、世界の経済政策のトレンドが「自由貿易、小さな政府、ネオ・リベラリズム」から「政府の経済介入強化、大きな政府、配分重視」の方向へ転換した。同様の変化は1930年代にも起きた。世界も中国も「歴史は繰り返す」。

〇2020年、中国に大きな変化が起きた。米国と長期持久戦を闘っていく方針を固めたのだ。「米国は衰退に向かっている」という判断が「持久戦を闘えば、時間は中国に味方する」という楽観を生んだからだ。だが、「時間は中国に味方する」ことはない。貧富の格差、不動産バブル、「隠れた政府保証」がもたらす弊害、財政難、少子高齢化などの難問を抱えているためだ。GDPで米国を抜くことはなく、中国経済は崩壊しないものの、「中所得国の罠」への道をたどる。

〇政治面でも軌道修正が避けられない。共産党支配によるタテ単軸制御型システムの限界――「何でも党が指導」体制ではもうやっていけない。老いた文革世代がリードする「中華民族の偉大な復興」という看板は若者から支持されずもう降ろすとき。

〇米中対立は世界の関心事だが、「米中対立」は迫り来る世界の大変化の前奏曲に過ぎなかったことになるような事態が生じる可能性がある。国家権力としての米国と中国(米国政府と中国政府)は共に国内政治経済で抱える問題ゆえに衰退する可能性がある。世界的なインフレの回帰、金利上昇による債務負担増に伴う主要国(日米欧中)の国家財政の破綻懸念が高まる。さらに、国内の分断、貧富の格差の拡大、気候変動リスクに主権国家は揺さぶられている。米中対立が深刻化し、自由貿易体制が縮小し、経済ブロック化が進めば、1930年代同様、世界は大きな試練を迎え、既存の国際秩序が根本から崩れる「グレート・リセット」が到来する可能性がある。

〇そして日本は、米中対立が長期戦になることを覚悟し、台湾有事への対応、安全保障と経済関係のバランスをとるべきこと、自由貿易ルールの遵守、中小国の横断的連帯、米国の動きに先手を打ってイニシャティブを発揮することを説く。

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