認知統語論
認知言語学における構文の概念と分析手法から,文を超え談話も含めた上で構文をどのように分析記述できるのか。Ronald W. Langackerの提唱する認知文法の枠組みを用いて日本語および他言語の文法現象の分析を試みる。
(本書まえがきより)
本書では,領域固有な言語能力を前提とせず,人間の一般的な認知能力とそれを用いる認知主体の概念化(conceptualization)の観点から統語現象の記述と説明を試みる。本書でこれから詳述する認知言語学のパラダイムは,言語を自律した閉じた系とはみなさず,人間の脳と身体の進化の結果として創発した認知能力の発現としてとらえている。そのため,一般的な学習のメカニズム,環境と相互作用しつつ認知主体が作り上げる身体感覚と世界に関する知識,他者との協働やコミュニケーションを通して作り上げる共同体や社会制度など,地球という環境に適応しつつ進化を積み重ねてきた生物としてのヒトの持つ特性を注意深く検討しながら研究を進める。そのため,常に他の研究領域と行き来しつつ言語の本質に迫るアプローチをとる。認知言語学のアプローチは,他の領域の研究と密接にコミュニケーションをとりつつ行われる開かれた研究なのである。
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