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人は自然界の中にあって呼吸し、飲食物を摂取し、消化・吸収・排泄しながら生命活動を営んでいる。それら生命活動はすべて人体における昇降・出入運動として総括できるが、臓腑はその昇降・出入運動の動態バランスを維持する上で中核を担っている。そして病とは人体における昇降・出入運動の障害であり、その昇降・出入運動の障害を調整し正常な動態バランスを回復させることが治療であり、これこそが漢方治療・鍼灸治療の本質である。
中国の歴代名医達はこの昇降・出入理論の観点から重要な臨床口訣を遺してきている。著者による1990年刊『中医昇降学』は中国伝統医学史上に散在するそれら昇降・出入理論とその診断治療をはじめて体系化・学説化した書として中国伝統医学の歴史に名を刻んだ名著である。
本書はその刊行から30年の歳月をかけて我が国在住の著者が、日本の東洋医学医療事情を背景に臨床運用に有益な内容を加筆、その後の新たな研究成果を併せて大幅に増補改訂した日本版である。
臓腑・表裏の昇降出入障害の把握、重要薬物の昇降浮沈の性能、繁用方剤の昇降出入の性能ベクトル、昇降出入理論に基づく経絡兪穴の性能など、本書の内容は我が国の漢方・鍼灸臨床において実用価値の高い内容を網羅している。昇降・出入理論を踏まえて治療に臨むことができれば治療効果は一段と高まる。
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