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思ったことを上手に言葉にできない、お子さんがいます。
「伝えたい」気持ちを、「伝えられない」そのもどかしさに、
辛い気持ちや、寂しい気持ちを抱えているお子さんがいます。
言葉だけが、「こころのすべて」ではありません。
言葉にならない気持ちの奥に、子どもが伝えたかった「愛の言葉」が隠されているのです。
本書の主人公はそんな《ぶし》です。
感謝の気持ちを伝えるために、悩み、迷い、戸惑いながらも愛の中で生きていきます。
私が初めて【ぶし】(私の場合、自閉症スペクトラムの女の子)に出会ったとき、
【ぶし】は自分の中の決まりごとを忠実に守り、日々粛々と過ごしていました。
その頑なな姿勢とひたむきな視線が、まさに【武士】という印象でした。
彼女は、言葉をもっていませんでしたが、
初めてのことへの不安や、予定変更に対する抵抗、
やりたいことへの執着などを言葉以外のあらゆる手段で、周りの人たちに表出していました。
時には声を荒げ、壁を叩き、地団太を踏んで『何とか理解してほしい』と
日々、奮闘していたのです。
何事にも常に本気で臨む彼女は、からだも心も辛そうに見えました。
その後もいろいろなタイプの【ぶし】と出会いました。
本書タイトル『かたじけない』は『ありがとう』という
言葉にしづらい【ぶし】の感謝の気持ちを
サムライ言葉に置き換えたものです。
言葉はなくても、表情、身振り、声の調子などから
相手のおもいに触れ、互いが歩み寄るところから
コミュニケーションが始まるとおもいます。
そんな風に人と人とが向き合う姿を願いながら、この絵本を描きました。
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