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ギリシア文学の嚆矢とも言うべきホメロスの『イリアス』において、ゼウスは「神々の父」としてオリュンポスの神々を圧倒的な力でその支配下においている。オリュンポス諸神はゼウスを頂点とする家父長的な支配構造のもとに統合され、ゼウスの権力は盤石なものと考えられていたようである。しかし、ミュケナイ時代の線文字B文書によれば、ゼウスが他の神々に勝る最上位の地位を得ていたという証拠は見いだせない。むしろ、そこで特権的な地位を確保しているようにみえるのはポセイドンである。ミュケナイ時代以後において、いかにしてゼウスは覇権を確立するに至ったのか。本書はその謎に迫る。
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