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既刊句集『弦楽』『黒鍵』『連音』『高きに登る』『弦響』にくわえ、著者第6句集にあたる新作『輪舞曲(ろんど)』を集成。
巻末には、永島靖子・福田若之による「解説」および「自筆年譜」「解題」「初句索引」を付す。
句業60年余、『評伝 三橋敏雄―したたかなダンディズム―』の著者による、ひたすらな俳句の響き。
父ほどの男に逢はず漆の実
白芥子をまはり躰が逢ひにゆく
橋を来る揚羽に双手ひろげたる
卯月浪この子を抱き飽きにけり
呼ぶ声を空は返さず花ぐもり
もう誰の墓でもよくて散る桜
嗅いでから抱く赤ん坊朝ぐもり
雨から雪へ老人ばかりのタンゴ
桃と桃かすかに触れてゐてこはい
謎のないわたしと老いた梟と
花ふぶき花ふぶき机上死こそあらめ
白蛾も来よわが九十の賑ひに
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