これほど刺激的な学問の領域があったのだろうか…?
個性豊かな書き手により、文学を中心に、歴史、宗教、音楽、演劇等を
縦横無尽に論じる新しい試み。
本書の白眉となるものは、ケンブリッジ大学のモウズリー博士の夏期講座の
講義録、シェイクスピアの「恋人たちの死」の論考である。
また、古典的名作といわれるシドニーの『アーケイディア』の成立、構造、
語りを精緻に論じた論考も含まれよう。
そして、今論集で注目にあたいするといえるものは、新進気鋭の
中堅・若手研究者たちによる詩論である。
ハーバートの詩におけるシンボルのメカニズムを
論証した詩論、トマスの詩とイェイツとの関係を探求した論文や
キャロル・アン・ダフィの五番目の詩集についての詩論。さらには1960年代の
リヴァプール詩における代表的な詩人の音楽活動との関係に論及したもの、
現代詩人のR・S・トマスの詩を「否定神学」の観点から論じたもの等である。
それらに加え、コンラッドの「勝利」論、マードック『ブルーの夢』、
H・D・ソローの「住まい」、トウェインの実像をめぐる論考ほか、
J・D・パソスにおけるスペイン内戦、シェパードのアイルランドと演劇、
アトウッド『またの名をグレイス』を論じたものまで、様々な論点をさらに
切り開こうとする意欲的な論考に溢れた論集が本書ということになる。
【収録内容】
Ⅰ イギリス文学編
第1章 講義:世界を変えるシェイクスピアの二組の恋人たちの死
チャールズ・モウズリー(伊澤東一訳)
第2章 子供の反逆・『恋の骨折り損』と『御意のままに』
杉浦裕子
第3章 シドニーの『アーケイディア』
村里好俊
第4章 ジョージ・ハーバートと聖なる贈物のパラドックス
山根正弘
第5章 コンラッドの『勝利』論
吉岡栄一
第6章 アイリス・マードックの『ブルーノの夢』論
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