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本書は、法律の私法・民法領域における法人でない団体につき論じる本格的研究書である。法人でない団体の法的基礎を構成するのは、いわゆる権利能力なき社団および民法上の組合であるが、本書はそれらについて、日本とドイツの比較法研究に基づき新たな法解釈論を提唱するものである。それは、日本の2017年民法改正およびドイツの現代的な新たな権利能力なき社団論を踏まえたものとなっている。
本書のモチーフの1つは、最終章「民法改正後の権利能力なき社団と民法上の組合―ドイツにおける権利能力なき社団の現代的展開とともに―」にあるように、ドイツ法学において、判例・学説が一致して民法上の組合に権利能力を承認し、それによって、権利能力なき社団にも権利能力を承認する理論的転回/展開を見せたことにある。本書は、ドイツにおいては判例・学説によって権利能力なき社団論が変容し、日本においては民法上の組合に関する2017年民法改正によって権利能力なき社団論が変容したものと評価し、それに基づき、権利能力なき社団に関して、法律に根拠付けられた実定的な法的処理を解釈論として提示している。
すなわち、日本における従前の権利能力なき社団論は、ドイツにおけるそれを学説継受し、権利能力なき社団とはその実体が社団であるにもかかわらず法人格を有していないものであるとし、それには民法上の組合に関する規定を適用するのではなく、社団法人に関する規定を類推適用すべきであるとしてきた。しかし、2017年民法改正により民法上の組合の規定も改正され、それは権利能力なき社団の法的処理に適合的な規定となっている。たとえば、組合の債権者は組合財産について権利を行使をすることができ、組合員の債権者は組合財産について権利を行使することができないとする民法の規定(民法675条1項・677条)は、権利能力なき社団に直接に適用し、そうした法的処理の実定的根拠とすることができる。組合員の個人的責任を定める675条2項本文は、とくに非営利の権利能力なき社団に適用した場合に不都合なようにも見えるが、この点については、非営利目的による代表権の制限から、権利能力なき社団には債務が発生せず、したがって、構成員の個人的責任も生じないとする法律構成を提示することによって、実際的な不都合を回避している。
本書のこうした日本法上の解釈論は、ドイツ法学においての、権利能力なき社団論、組合と社団の類型論・団体法定主義、権利能力なき社団の構成員の個人的責任、民法上の組合および組合員の個人的責任などに関する理論が基礎となっており、本書の各章において縦覧に供されている。
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