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はじめに
今回の学習指導要領改訂では「学習」ではなく、「学び」という言葉が使われています。「学びの地図」や「主体的・対話的で深い学び」等の言葉も使われ、そこには「授業の主体は子どもである」というメッセージが強く表れていると感じます。これらの状況を踏まえ、今回の学習指導要領改訂は、「教える」という教師主体から「学ぶ」という「子ども主体」の教育への大改革で、中には学制発布以来の大改革だ!と書く本もありますが、現場の皆さんの実感はどうでしょうか?この本を手にするような教師なら、多くは「子ども主体の学びは当たり前、自分は以前からそう考えて実践してきた」と感じているのではないでしょうか?
一方で、今回も「主体的・対話的で深い学び」や「資質・能力の三つの柱」、「見方・考え方」など、色々新しい言葉が出てきましたが、例えば「主体的・対話的で深い学び」と、これまで盛んに言われてきた「習得・活用・探究」の関係は?とか、「資質・能力の三つの柱」と「生きる力」、「確かな学力」との関係、そしてこれまでもあった「見方や考え方」と「見方・考え方」の違いは? など、分かっているようで曖昧な点も多いのではないでしょうか? その結果、真面目な教師ほど混乱し、「文科省はまた新しい用語を出してきて、ますます混乱してきた」等と感じ、「用語は変わっても、内容はこれまで通りで良いのではないか?」と「分かったつもり」になって、結局、今まで子ども主体に考えて、自分が大事にしてきたことと内容的に大きな違いはない、研究授業の指導案や指導要録などを書く際の言葉遣いや用語、構成などをこれらの用語に合わせていけば良いのではないか等と考えてしまいがちではないでしょうか?(今までの自分がそうでした)
今(これまでもそうでしたが)、現場は忙しいです。特に、新型コロナウイルス禍という今までにない難しい課題も突きつけられています。そんな課題はなかった自分が現役の頃も、学習指導要領が改訂されても総則を読むことは殆どありませんでした。理科に興味があり、理科の「教科編」はそれなりに読んで理解してきたつもりでしたし、教務主任になってからは、総則の授業時数など、教育課程編成の「きまり」的な部分は注意しながら読んでいましたが、それは目先の必要にかられた拾い読みが殆どで、それで「分かったつもり」でいたのが現実でした。管理職になってからも、総則に関しては雑誌や解説本を少し読むくらいでした。
ところが退職して、幸い読める時間ができ、読む必要のある職務になって、前文を含む「学習指導要領」及びその解説である「総則編」を読んでみると、如何に自分は分かっていなかったのかに初めて気付きました。結論から言うと、特に今回の改訂では「総則編(前文、総則及び解説編を含む、以下同じ)」を読まないことには、「教科編」だけでは「真の改訂の意味」を掴むことは難しいと実感しました。自分の不勉強な現役時代をさておいて、今回こそ現場の皆さんには「総則編」を読んで欲しい、読まなければならないと強く感じています。
(はじめにより抜粋)
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