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いまヨーロッパでは、「アセットベースト・アプローチ」とか「ポジティブヘルス」など、新しい概念の嵐が吹き荒れている。「できないこと」に対してサービスを提供するのではなく、個人や地域の資源(アセット)に目を向けて、その人の「well-being(幸福)な日常」を自分で取り戻せるようにサポートしていくものである。2015年がまさにその転換点となり、オランダはもっともドラスティックな変革を遂げている。
オランダでは、1968年に創設された介護保険を重度者のみを対象とする制度に変更し、家事援助やデイ・サービスなどは社会支援法に基づき自治体の仕事とした。そのうえで「自立と社会参加」を理念として介護保険を抑制しようとしている。自治体や事業所では次のような言葉を数えきれないくらいに耳にした。
「福祉国家は終わった。国が何でもしてくれると思ったら大間違い。まず『あなた自身は何ができますか?』が問われ、次に家族、友人知人、地域のボランティア組織による支援の可能性を探る。いずれも可能性がないときに初めて『福祉サービス』が使える」
この国では、制度的サービスはインフォーマル資源を補完するものとみなされ、大胆なコペルニクス的転換が成し遂げられている。まさに「インフォーマルファースト」である。
これを可能にするのが、国民の40パーセント以上が行っているというボランティアである。彼らを組織化する「福祉組織」が、介護組織をはじめとするさまざまな機関とプラットフォームを形成しており、「コ・プロダクション(協働)」しているのだ。また、自治体も介護組織も、常にイノベーションに挑戦している。これが、水(運河)と闘いながら市民社会を形成してきたこの国の「オランダ・ミラクル」である。
本書では日本における先進事例も紹介しつつ、「人と地域の『力』」を活用していくための方策を提言する。読了後、「介護」に対する考え方が変わることになるだろう。(まつおか・ようこ)
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