取り寄せ不可
「絵や写真はなぜあるの?
詩人が発するのは何の言葉なの?
誰の目や、声なの?」
パンデミック直前、
この世で最も暗いパリの夜。
写真家の体は「虚」となって
忘れられた声を暴風のように孕み、
それを私たちの前に静かに現出させる。
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写真家・高橋恭司の完全新作による写真集を刊行いたします。
1990年代以降、数々のポートレートや風景写真を発表してきた高橋の作品は、常に時代や風潮の喧騒の外側へと見るものを誘うオルタナティヴな引力とともに、私たちの前に立ち現われてきました。
本作は、その高橋が2019年の晩秋、初めて訪れたパリを中心にフランスで撮影した写真群を収録したものです。
近代写真の始まりの街、世界を欲情させ続けてきたイメージの都、万博や近代オリンピックといった「近代国家的スペクタクル」の舞台。
すなわち、今日においても我々が互いをまなざしあう近代の視線や構造が形をとったその街。
茫漠たる荒野からそんなパリの細部へと視線を移した写真家がフィルムに収めた数々のシーンは、近現代史の傷を癒す暇もないほど短かった千年紀末を経てさらなる断絶が拡がった世界の断片であり、それを決定的に寸断したCOVID-19のパンデミック直前の、今となっては二度と戻れない時空間でもあります。
ハッセルブラッド1000Fがギロチンのようなシャッターで切り落としたその中に、私たちの世界が捨象し忘却してきたものたちの声が真夜中の長距離通話のように響く一冊。
新作のみで200頁超のボリュームという、高橋の長いキャリアの中でも初の試みとなる写真集です。
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