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太平洋戦争のさなかに書かれた一家族の物語
「中隊長殿……いっぱい、いかがでありますか」伸太郎は腰の瓢箪をとった。微笑をふくんでさしだした。別盃のつもりであった。
「ありがとう」礼三はうけとって、瓢箪に口をつけた――。
とある商家・高木家の三代目・伸太郎は、初代・友之丞から受け継いだ乃木希典の赤瓢箪を懐に、中国戦線からフィリピンへと転戦。そこへ偶然にも養子に出ていた実弟の礼三が上官として赴任してくる。久しぶりの再会を喜び合う二人だが、間もなく米軍との戦闘は激しさを増していき……。
自らの戦争体験や従軍作家としての経験を生かして、末端の兵士の姿を活写した戦争文学の極致。
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